エレクトロニカオタが非オタの彼女に電子音響の世界を軽く紹介するための15人 前編 


ごめんなさい、一度参加してみたかったんです。このシリーズ。15本(人)に増量しちゃいましたが。


そんなわけで、果たして需要があるのかはわかりませんが、現代のエレクトロニカやテクノの理解につながる、15人の硬派な電子音楽家を紹介してみたいと思います。
電子楽器の登場以降から、現在のラップトップエレクトロニカまでの流れの中で、それぞれの時代で重要な役割を果たしたと思われる15人を、「電子音楽の音色と技術の変遷」という視点で選んでみました。


もちろんここに挙げた人々だけでは、この世界を真に理解するには到底足りないわけですが、電子音楽の世界にもそれなりの歴史があるんだねェということが、あなたの彼女にも軽くご理解いただければ幸いです。
しかしながら、これで彼女にもてるかどうかは、今のところ全く不明です。


なお、あまりに長くなりすぎたため、前編と後編に分けます。
まずは50年代から80年代くらいを中心に活躍した音楽家6人です。

(なお、このページに貼り付けてあるYoutube動画をまとめて再生する方法はこちらです)

ジョン・ケージJohn Cage


言わずと知れた、4分33秒の無音の曲であまりにも有名な音楽家です。
フルクサスという前衛芸術集団の一員でもあり、それまでの音楽には使われてこなかった、楽器以外のいろんな音響を音楽に取り込もうとしました。
ピアノにボルトをはさんでみたり、ラジオを使ってみたりと、まだ幾分アナログな手法による音響が楽しめます。
鑑賞者次第では無音ですら音楽になるとまで言い出し、その後の音楽にあらゆる音響が取り込まれるきっかけとなっていきました。
でも普通に美しいピアノ曲なんかも多く書いています。


John Cage Sonata V

Noise with John Cage

John Cage "4'33"


カールハインツ・シュトックハウゼン(Stockhausen)


電子音楽の神様みたいな人です。
音の原子とも言えるサイン波が、技術の進歩によって実際に耳で聞くことができるようになったことに、強い影響を受けた音楽家です。
今までの音楽家が扱っていた時間の粒度よりも、さらに細かい時間の領域で音楽を考えた人でもあります。
たとえば、ひとつの曲を時間的に1秒に縮めると、それはひとつの音に聞こえます。逆にひとつの音を時間的に分単位まで伸ばせば、それをひとつの曲としてみることもできるでしょう。
このような音という現象そのものに対する思索と実験の末、ヘリコプターの音のようなバイオリン曲や、28時間ぶっ通しで演奏するオペラなんかも生み出しています。
もはやどこまで本気なのか分からないくらいぶっ飛んだ曲が多いのが、この人のニクいところです。

この人の登場あたりから、工学/科学的な領域のものであった音響理論が、本格的に音楽作品へ持ちこまれはじめることになります。


Hymnen

kontakte

Helicopter String Quartet


ヤニス・クセナキス(Xenakis)


大建築家ル・コルビジェにも師事した、建築家 + 音楽家です。
コンピュータや数学や図形を駆使した斬新すぎる音楽を作りました。
理系でアカデミックでアバンギャルドで時代を先取りしすぎで、もう最高ですとしか言いようがないです。
作曲に確率モデルを持ち込むなど、現在のエレクトロニカにも通じるような実験を多くしています。


Iannis Xenakis - Metastasis (Spectral View)

Mycenae Alpha


トミタ・イサオ - 冨田勲


電子音楽界の巨匠です。「ジャングル大帝」や「たそがれ清兵衛」の音楽なんかもこの人が作曲しています。
伝統的なクラシック風メロディを、さまざまなヘンテコな電子音響が彩っています。
70年頃、電子楽器のシンセサイザーの伝説の名機であるモーグが世に出始めており、それを日本に初めて輸入したのもこの人です。
YMOの第四のメンバーと言われる松武秀樹の師匠でもあります。
当時のシンセサイザーは音を変えるたびに配線を繋ぎなおす必要があったため、今よりも想像を絶する苦労がありました。


The Planets Isao Tomita

Isao Tomita the Earth


クラフトワークKraftwerk


前衛音楽寄りだった電子楽器の音を、ポップミュージックへと大胆に昇華してみせたテクノポップのバンドです。
アナログシンセサイザーをステージに並べまくってライブをするという姿や、アルバムのタイトルなどからアンドロイドっぽさが滲み出ています。
モミアゲを大胆に真横にカットした「テクノカット」の創始者でもあり、それがまたいっそうアンドロイドです。
近年再び活動し出し、結構な歳にも関わらず現代テクノのいい線を行ってる曲を生み出したのはさすがですね。


Kraftwerk - The Robots

Kraftwerk - Trans Europe Express

kraftwerk- tour de france 2003


メルツバウ - 秋田昌美Merzbow


日本が誇るノイズミュージック界の鬼才・仙人です。
もう完全にノイズまみれで、もはやこれが音楽なのかどうかも凡人には判定不能な世界ですが、常に一定の需要はあるわけです。
近年ではCD50枚セットなんかも出てたりして、すごいことになってます。
後編に出てくるフェネスの音色と比較してみるとおもしろいかもしれません。


Merzbow - 1930

Keiji Haino and Merzbow at Moers Festival



後編はこちら